ある蔵見学の風景 --地酒のできるまで・酒の母--

さて、次の工程にいきましょう。ここまで米の原料処理が終わって麹まできました。
いよいよ、酵母菌を生産する工程です。ごらん下さい。寒いでしょう。麹の室と一転して5度に設定されています。小さなタンクがいくつも並んでいますが、この中で酵母が育成されます。
ただよく見ていただくと密封されたタンクではなく、大気と接する開放タンクであることがわかります。酒の酵母はいわば箱入入り娘のようなもので汚染され易い性質を持っています。従って酵母を守ってやるケビンコスナーのようなボデーガード役が必要です。それは、乳酸菌です。
よく夏にごはんを炊くと腐りやすいから酢を入れたり、まな板を酢で洗ったりしますがバクテリヤを防ぐ効果があります。酸の力をいまでこそ解明されていますが酒は江戸時代より続いてきたもので昔の人は乳酸菌という言葉さえ知らなかったと思います。現代の我々は乳酸菌を知っていますから合成された乳酸菌を入れてやればすぐボテーガードとして役にたってくれます。では昔の人はどうしたのでしょうか?
それは自然の乳酸を育成してやる方法を用いました。大気中には様々なバクテリヤが生息していることは申しました。その中から乳酸菌を取り入れ酵母の守り役としました。それが生モトと呼ばれる育成方法で、やがて生モトの簡略法として山廃が生まれました。
以上二つの育成方法がありますが現代手法を速醸といって2週間、生モト、山廃は1ケ月ほどかかります。酵母育成の工程を酒の母と書いて酒母(しゅぼ)といいます。

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